酒の歴史館・文化館 酒の歴史館
文化館


著者:リチャード・パーキンス
撮影日:2025年05月12日
住所:〒766-0001 香川県
仲多度郡琴平町623



日本酒は、日本の伝統的な酒です。酒米(さかまい)を使用して造られる物で、その起源は縄文時代(紀元前1万4千〜紀元前300年頃)にまで遡ります。この時代に稲作が始まると同時に、酒も造られていたと考えられています。その後、日本各地で日本酒を造る酒蔵が数多く生まれました。評判の酒蔵の1つに、香川県の「西野金陵」があります。万治元年(1658年)に創業したこの会社は、元々徳島県で藍染め(あいぞめ)の染料を扱っていました。安永8年(1779年)に酒造りを始め、寛政元年(1789年)には香川県琴平町に酒蔵を移しました。現在では、日本酒の多くが別の場所で製造されていますが、琴平町の酒蔵は土産屋と資料館として利用されています。「酒の歴史館・文化館」という資料館で、西野金陵の歴史や日本酒の造り方について詳しく知ることができます。

酒の歴史館・文化館では、日本酒の作り方がとても分かりやすく紹介されています。パネルによる詳しい解説がある上に、人形や実物そっくりの模型も展示されていて、各工程の目的を実際に確かめられます。そのため、最終的な仕上がりをイメージしやすくなっています。また、西野金陵の酒の魅力を伝える資料館でもあります。見学の後には、自分好みの日本酒を土産屋で購入し、味わうこともできます。

西野金陵が元々使用していた酒蔵は、伝統的な木造建築です。このような建物は年々減少していて、現在では貴重な存在です。この酒蔵を見学しながら日本の伝統的な建築をじっくりと堪能できます。また、日本酒造りは機械化が進み、昔ながらの製法を守る酒蔵は少なくなっています。ここでは、木樽など、現在では殆ど目にすることのない道具が展示されています。この資料館は、日本の文化や歴史に直接触れられる場所でもあります。

日本酒の原料となる酒米も展示されています。酒米は精米歩合によって味や品質が変化します。そのため、目指している味などで研ぐ歩合が異なります。展示室には、原米(玄米)と精米した酒米が並べられていて、精米によってどのように変化していくかを目で確かめることができます。日本酒造りにおいて酒米がどれほど重要な原料であるか分かります。

ここでは、様々な形の日本酒を飲む時に使用する猪口(ちょく)や徳利(とっくり)などが展示されています。酒蔵の外に掲げられることの多い杉玉もいくつか展示されています。緑色の杉玉は、日本酒の仕込みの開始や完成を象徴する物です。展示されている杉玉は大きさや形も様々で、その存在感に思わず目を引かれます。

上記の通り、日本の伝統的な建物は年々減少しているので、実際に訪れて体験できる伝統的な酒蔵は貴重な存在です。ここでは、日本の伝統について学べます。まるでタイムスリップしたような気分も味わえます。そのため、お酒を飲まない人でも酒の歴史館・文化館を楽しく見学できます。ここは香川県の名所である「金刀比羅宮」の近くにあり、公共交通機関でのアクセスも便利です。是非この酒蔵を訪れ、日本酒の魅力を発見してみて下さい。





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原米(玄米)と研いだ米の比較です。



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ここは、「精米・洗米・蒸米」と呼ばれる工程です。


日本酒を作る時、一般的な食用の米は使用されていません。酒米(さかまい)と呼ばれる、日本酒に適した米が使用されています。この工程では、原米(玄米)を研ぎ、白米にします。研ぎ具合で日本酒の品質や味が決まります。そのため、日本酒によって研ぎ方が異なります。研いだ酒米を洗い、蒸します。酒米は、一般的な米のように炊くのではなく、蒸すことで必要な水分だけを含ませることができます。



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蒸米を冷ましているところです。



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ここは、「麹作り(糖化)」と呼ばれる工程です。


蒸米(むしまい)を麹室という部屋に移し、机の上に広げます。約35℃の部屋で、蒸米に麹菌を振りかけます。この工程で、蒸米の澱粉(でんぷん)が葡萄糖(ぶどうとう)に変化します。蒸米をアルコール発酵させるためには、澱粉ではなく、葡萄糖に変化させる必要があります。



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恐らく、この小さい木樽で「酒母作り(発酵)」と呼ばれる工程が行われます。


麹と水を混ぜた物に、酵母と蒸米を加えます。この液体をゆっくりと発酵させます。酵母を加えることで、葡萄糖がアルコールに変化します。完成した液体は「酒母」と呼ばれます。



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この大きな木樽で「3段仕込み・醪(もろみ)造り」と呼ばれる工程が行われます。


完成した酒母を大きなタンクに移します。昔は木製の樽を使用していましたが、現在は琺瑯(ほうろう)やステンレス製のタンクが一般的に使用されています。移した酒母に麹、蒸米、水を3回に分けて加えます。分けずに一気に酒母を発酵させようとすると、酵母が弱り、雑菌が増殖します。そのため、液体が適切に発酵せず、品質の良い日本酒は出来上がりません。できた液体は醪(もろみ)と言います。



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ここは、「搾り」と呼ばれる工程です。


ここでは、発酵を終えた醪に圧力をかけて濾(こ)します。この工程により、日本酒と酒粕を分けます。日本酒の搾り方には、大きく分けて2つの方法があります。1つは、酒袋(さかぶくろ)を使用する方法です。木綿の袋に醪を入れ、圧力をかけて搾り出します。もう1つは、より現代的な方法で、機械を使用して搾る方法です。自動圧搾濾過機(じどうあっさくろかき)を使用して醪を搾ります。



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写真はありませんが、搾られた日本酒は、次に「濾過」という工程で不純物が取り除かれます。


搾った日本酒には微細な固形物が残るため、それを取り除きます。一方、日本酒の種類によっては、固形物を残したまま飲まれることもあります。濾過により、不純物のない澄んだ日本酒になります。



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ここは、「加熱・貯蔵・調合」と呼ばれる工程です。


仕上がった日本酒は、このままでは飲むのに適しません。肉眼では確認できない酵母が残っていて、発酵が進行してしまうため、味が変化します。味が変化しないように出来上がった日本酒を加熱し、酵母の働きを止めます。また、火落菌(ひおちきん)が残っている場合もあり、これは日本酒を酸化させる原因です。更に、雑味や異臭を生じさせる乳酸菌が混入している可能性もあり、それらも死滅させる目的で加熱処理を行います。その後、味をまろやかに整えるように日本酒を貯蔵します。種類によって貯蔵期間は異なりますが、一般的には製造日から1年程度です。最後に他の日本酒と調合したり、加水して味を調整したりします。同じ製法で造っても、味に僅かな違いが生じるので、狙い通りの味に仕上げる目的でこのような調合が行われます。




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