著者:リチャード・パーキンス
撮影日:2025年05月13日
住所:徳島県三好市東祖谷菅生191
日本は少子化が急進しています。毎年出生数が減少していて、日本は危機的な状況です。大都会から離れれば、少子化がどれほど深刻なのか明確になります。場所によっては、日本人が消滅する可能性もあります。日本全国には、住民が少ないせいで学級閉鎖が起こり、生活に欠かせない病院なども閉鎖され、生活が不可能になる町があります。若者の多くは、生活に不便だと感じる田舎から都会に移住するため、田舎町の崩壊に繋がっています。しかし、中には自分が生まれ育った故郷が大好きで、そこの住民が減少しても、その町に残りたいという人がいます。中には、寂しかった町の活気を取り戻そうと努力している人もいます。徳島県には、住民が減少しても、なお数人が生活を続ける町があります。それは「かかしの里」と呼ばれている集落です。ここは、日本三大秘境の1つである「祖谷」の山奥にあるにもかかわらず、観光客が訪れるとても素敵な場所です。
名前の通り、ここは案山子(かかし)という畑などでよく設置されている人形が沢山展示されています。この集落に在住する綾野月美さんが制作した案山子です。元々は平成15年(2003年)に畑を烏の被害から守る目的で自分の父親に似た案山子を制作し、畑に設置しました。しかし、近所の人がこの案山子に挨拶をするようになったことで楽しくなり、他の案山子も制作するようになりました。現在は300体以上の案山子を1人で制作しています。
現在、この集落は、様々な人が訪れているものの、案山子の制作が始まった頃は、そこまで知られていなかった集落でした。平成26年(2014年)に広島県の大学に留学中の1人のドイツ人がここを訪れました。この集落の映像を撮り、インターネットに投稿し、そこから世界的に注目されるようになりました。
綾野月美さんが制作した案山子は、集落のあちこちにあります。公民館や廃校になった学校など、案山子は至る所に存在します。それは、まるで減少した住民を取り戻したかのような、山奥だと思わせないほどの活気に溢れています。綾野月美さんの住宅にも案山子があり、在宅していれば、そこの案山子も自由に見学できます。
綾野月美さんが制作した案山子の数に、誰もが驚くでしょう。しかし、驚きは案山子の数だけではありません。よく見ると、服装、髪の毛や顔の形なども、案山子ごとに異なります。子供から年配者まで幅広い年齢の人物が再現されていて、案山子は1人で制作された物だとは思えないほどどれも個性豊かにできています。祖谷は、綾野月美さんの努力により、住民が少なくても、世界中の人々が訪れるとても面白く、魅力的な場所に変化しました。かかしの里は、訪日外国人がいっぱいで、他の日本の観光地にはない良さがあると言っても過言ではありません。決して訪れやすい場所ではないものの、おすすめとして訪ねてもらいたい場所です。
注意
ここは、単なる写真スポットではありません。集落全体が寂しさを取り除くために案山子が制作されていますが、何人かが実際に暮らしている場所でもあるので、マナーを守って案山子を楽しんで下さい。
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